汚染水放出問題

ALPS処理汚染水の海洋放出を差し止めるための訴訟9月8日提起ALPS 処理汚染水差止訴訟弁護団
共同代表弁護士広田次男 河合弘之 海渡雄一

福島とその周辺の住民(東北から東京までの関東在住者)で決断を支え、応援する動きを作りたいと思います。原告になってくださる方(裁判費用13,000円をご負担いただきます。)を募集中。支援の会もこれから作る予定。
原告になりたい方は、8月28日までに下記まで、お名前、住所、電話番号、メールアドレスを明記してお知らせください。必要書類を送付します。
原告の氏名は、裁判上匿名にすることも可能。メールが使えない方はお電話ください。
ALPS処理汚染水差訴訟原告団事務局担当丹治杉江
〒970-8045 福島県いわき市郷ケ丘4丁目 13-5
電话番号090-7797-4673F A X0246-68-6930 メールアドレス ran1953@sea.plala.or.jp

http://www.labornetjp.org/news/2023/0821teiso
https://note.com/provida0012/n/n9d24e9a94adf

茨城 東京新聞 首都圏ニュース
https://www.tokyo-np.co.jp/article/272453

2023年(令和5年)8月25日(金曜日)

処理水の海洋放出 原発問題に取り組む茨城県内4人の声

 福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の放射能汚染水を処理した後の水の海洋放出が24日、始まった。水質への影響、海産物の風評被害は-。近海で操業する県内漁業者の不安や反対は根強い。放出に踏み切った政府の判断をどう考えるか、茨城県内で原発問題に取り組む4人に聞いた。(出来田敬司、青木孝行)

生物濃縮 食に危機感 「放出は容認できない。漁業関係者だけの問題ではない。海水は陸に打ち寄せたり蒸発したりする。生物濃縮も心配だ」。原発事故の県内避難者の支援などを続ける市民団体「福島応援プロジェクト茨城」事務局長の小張(おばり)佐恵子さん(71)=土浦市=は、食の安全に危機感を募らせる。

 市民の関心度も気になるといい、「原発事故後の二〇一一、一二年と比べ、原発反対への署名運動で市民からの熱を感じられなくなっている。福島の窮状をテレビや新聞が取り上げなくなっているのが、一番足りないことだ」と指摘する。

 「政権を代えなければだめだ」との思いを強める小張さん。「放出の危険性を伝えないことは、ある意味で加担していることになる。そのためにも国に放出をやめさせるよう活動を続けていく」と話した。

以下、小出裕章さんの論考です。

被曝診療57.pdf (tvm.ne.jp)
<https://www.go.tvm.ne.jp/~koide/Hiroaki/remark/%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E8%A8%BA%E7%99%8257.pdf?fbclid=IwAR3vzFezwUl0jMvRhncdwW0he7mEdHxGxGVTFy2z1oD3prmbw30AuipjhS8>

被暖・診療月報第57号 2023年8 月1 日
福島第一原発の放射能汚染水問題

元京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

被暖・診療月報第57号 2023年8 月1 日

福島第一原発の放射能汚染水問題

元京都大学原子炉実験所助教 小出裕章

  1. 溜まってしまった汚染水

2011 年3 月11 日、東京電力福島第一原子力発電所が東北地方太平洋沖地震とそれによって引き起こされた津波に襲われ、深刻な事故を起こした。

日本は世界の陸地面積の0.4%に満たない小さな国だが、その日本は、世界の地震の20 %が起きると言われる地震大国である。もともとそんな場所に原発を建ててはいけなかったが、東京電力はどんな地震に襲われても福島原発は安全だと言ったし、日本の国もその東電の言い分をそのまま認めて、安全のお墨付きを与えた。

しかし、事実として事故は起き、起きてしまった事故を前に、国と東電は「想定外」だったと言い訳した。

その後12 年以上の歳月が流れたが、熔け落ちた炉心が今どこにどのような状態で存在しているのか定かでない。本来、原子炉建屋は「放射線管理区域」であり、外界と隔離されていなければならない。しかし、その建屋地下が地震で破壊され、外部から地下水が流れ込んでくるようになってしまった。流れ込んできた地下水は熔け落ちた炉心に触れ、放射能汚染水となる。事故当初は、その放射能汚染水が為す術もないまま海に流れていたが、東電は海に流れていた汚染水をタンクに溜めるようになった。2023年7 月時点で、その量は130 万トンを超えている。

東電はALPS (advanced liquid processing system :多核種除去設備)などを使って、その汚染水に含まれている放射性核種を掴まえようとしてきた。しかし、汚染水の中にはトリチウムと呼ばれる放射性核種が大量に含まれている。トリチウムは別名三重水素と呼ばれ、水素同位体である。水素は環境中では酸素と結合して水になる。トリチウムも酸素と結合して水になる。その水はトリチウム水と呼ばれるが、化学的には普通の水と全く同じである。そのため、どんなに頑張って水の中から放射性核種を取り除いたとしても、トリチウム水は水そのものであるため、決して取り除くことができない。

「放射能汚染水」はそれに含まれる放射性核種を捕捉し、国が指定している基準値以下まで水を椅麗にできれば「処理水」と呼ばれる。しかし、今、福島原発に溜まっている130 万トンの水の中にはトリチウムが国の基準の約10 倍含まれている。マスコ

ミや原子カマフィアたちは「処理水」と詐称しているが、その130 万トンの水全部がれっきとした「放射能汚染水」である。その上、トリチウムを考慮から外したところで、130 万トンある汚染水の約70%には、ストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106 などトリチウム以外の放射性核種が未だに国の基準を超えて存在している。

  1. ますやるべきは地下水の流入を止めることだった

国と東電はこれ以上タンクを作る余裕がないことを汚染水放出の理由にしている。しかし、タンクを作るための土地は福島第一原発の敷地にまだまだあるし、周辺には除染廃物を置くために国が確保した中間貯蔵施設用の土地が広大にある。

目的変更のために法令を変えることは国のお手のものであり、やる気になれば容易にできる。しかし、一番大切なのは汚染水を増やさないことであり、本来の「放射線管理区域」の要件を満たすようにする、つまり地下水が原子炉建屋の中に流れ込まないようにすればよいだけなのである。

私は、その必要性を事故直後の2011 年5 月の段階で主張した。しかし、東電は6月に株主総会を控え、私が主張したような鋼鉄とコンクリートの遮水壁を作ろうとすると1000 億円の資金がかかり、株主総会を乗り越えられないとして採用しなかった。しかし、地下水の流入を止めないのであれば汚染水が増えるのは当然で、どうしようもなくなった東電は2013 年になって「凍土壁」なる壁を作ると言い出した。原子炉建屋を囲むように1. 5km にわたって1m ごとに長さ30m のパイプを地面に打ち込み、それに冷媒を流し、アイスキャンデーを作るように周囲の土を凍らせて壁を作るという計画であった。過去に経験のない大規模な凍土壁であったため、国はこれを試験として国費、つまり税金をつぎ込むことにした。その凍土壁は2019 年には完成したといわれた。それなら汚染水はもう増えないし、今溜めている汚染水を海に流す必要もない。しかし、凍土壁設置後も原子炉建屋への地下水の流入は続き、その挙句に、もうどうしようもない

と国と東電が言い出したのである。

  1. トリチウムの生成と環境への放出

先にも述べたように、トリチウムは別名三重水素(T) と呼ばれる水素の同位体である。水素には天然の状態で普通の水素(H) とその2 倍量たい重水素(D) と呼ばれる水素があり、どちらも放射能を持っていない。ウランが核分裂すると「三体核分裂(核分裂反応では原子核が2つに分裂するが、ごくまれにトリチウムのような小さな破片を含んで3 つに分裂する時がある。それを三体核分裂という)」によってトリチウムが生まれる。それは、原発の通常運転時には、燃料棒と呼ばれる金属製のさやの中に閉じ込められれていて、冷却水の中には出てこない。ただ、現在利用されている原発には重水炉と呼ばれる型の原発がある。重水は重水素を酸素と結合させた水で、重水炉は原子炉を冷やすために重水を利用する。重水素は中性子を浴びるとトリチウムになるため、反

応でできたトリチウム水が原子炉の冷却水となる。

冷却水の一部は日常的に漏れてくるので、重水炉は日常的にトリチウムを環境に放出することになる。例えば、カナダが開発したCANDU炉がその代表で、カナダの原発はすべてCANDU炉であるし、韓国の月城、中国の秦山3 期1, 2 号機もCANDU 炉で

ある。そうした原発では平常運転時にトリチウムを海に流している。

  1. もともと海に流す計画だったトリチウム

福島第一原発で炉心が熔けてしまったのは1, 2,3 号機の3 機の原子炉で、その炉心の合計の重量は250 トンであった。その中に含まれていたトリチウムを含む放射性核種が問題になっている。では、もし福島原発が事故にならなかったとしたら、その炉

心はどうなったのであろう?その場合、使用済み燃料は青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場に送られ、そこでプルトニウムを取り出す計画だった。プルトニウムは使用済み燃料中に核分裂生成物などと混然一体となった状態で存在しており、それを取り

出すためにはそれまで燃料棒の中に閉じ込められていたすべての放射性核種を高温高濃度の硝酸に溶かしたうえで、分離作業をする。その過程で、トリチウムはすべて水となり、一部を大気中、ほぼ全量を海に流す計画だった。

つまり、仮に福島の事故がなければ、その炉心にあったトリチウムは六ヶ所村で海に流される計画だった。

日本で放射性核種を取り扱う施設は法令で規制され、環境に放射性核種を放出する時には敷地の境界で国が決めた濃度以下にしなければならない。しかし、再処理工場で捨てるトリチウムは膨大で、到底法令を満たすことができない。そのため、六ヶ所再処理工場では沖合3km、海面下44m の海底までパイプを伸ばし、そこから勢いよくトリチウム汚染水を放出し、大量の海水と混ぜてしまえば安全だと言ったのである。

その六ヶ所再処理工場は当初の計画では1997 年に運転が始まる予定だった。しかし、超危険な工場の建設は思惑通りには進まず、四半世紀以上たった今でも運転開始ができないままである。2006 年から2010 年にかけては、実際の使用済み核燃料を使っての「アクティブ試験」を行ったが、それによって施設全体が放射能に汚染した。フクシマ事故を受け新規制基準が作られたが、それに適合するように施設の変更工事をする必要が出たが、現場の工事ができない状態になってしまっている。その六ヶ所再処理工場が今後運転開始に漕ぎ着けられるかどうか極めて疑わしい。

しかし、もし六ヶ所再処理工場が計画通りに運転するのであれば、そこでは1 年間に

800 トンの使用済み核燃料を再処理し、それを40年間続けることになっていた。そして、捕捉できないトリチウムは、その全量を環境に流し、それでも「安全」だと国は言ってきた。もし、今福島原発で問題になっている熔け落ちた250 トンの炉心の中にあったトリチウムを海へ流してはならないということになれば、六ヶ所再処理工場を動かすことはできなくなる。

  1. 安全問題ではなく原子力の死活問題

私がまだ原子力に夢を抱いていた頃、原子力は化石燃料が枯渇した後の無尽蔵なエネルギー源だと言われ、私はそれを信じた。しかし、実際には、原子力の燃料であるウランは貧弱な資源で、それを使って原発を動かしても、それから得られるエネルギーの量は化石燃料に比べて数十分の1 しかない。原子力を推進してきた人もとうにそのことに気づき、彼らは今の原発では利用できない非核分裂性のウラン(ウラン238) をプルトニウム239 に変換して利用すれば、資源量が60 倍に増えると言ってきた。60倍に増えたところで、ようやく化石燃料に匹敵する程度になるだけであって、原子力が未来の無尽蔵なエネルギーになることはない。それでも、原子力マフィアはウラン238 をプルトニウム239 に変えるための核燃料サイクを実現させると言って高速増殖炉の開発に取り組んだが、原型炉の「もんじゆ」は1 兆円以上のカネをかけたうえ、何の成果も出さずに廃炉となった。そして、ウラン燃料を再処理するための六ヶ所再処理工場すら完成させることができないのが現在であり、プルトニウム燃料用の再処理工場など影も形もない。でも、核燃料サイクルが実現できないことを認めてしまえば、原子力はエネルギー資源にならず、日本の原子力開発の根本が崩れてしまう。日本はできもしない核燃料サイクルにしがみつき、六ヶ所再処理工場すら諦めないし、そのために福島の汚染水を何としても海に流そうとする。

福島のトリチウムを含めた放射能汚染水を海に流すことは、それをどんなに薄めたとしてももちろん危険を伴う。でも、この間題の根本は、単に「安全」か否かにあるのではない。あまりに愚かな原子力開発そのものを今後も支持するのか拒否するのか、その分かれ道なのである。

 

 

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